深センでインターネットを使う話

 2014年12月に第2回ニコ技深圳観察会に参加したときの話を記していきます。Maker Faire Shenzhen 2015まであと2週間なので、まずはネット接続の知見共有を。

前提:「金盾」

 中国固有の事情として Google, Facebook, Twitter, LINE などへの通信が遮断されていますGoogleは検索だけでなく、GmailもMapsも使えません。あまりにも不便ですので、これを回避した回線を調達する必要があります。

面倒臭い人向け:国内3キャリアの海外パケット定額プラン

 何も考えなくても、いつものスマホで普通にインターネットが使えます。楽です。滞在日数 x 3000円を払える人はこれで良いと思います。

 使わない人も、非常時のために一読はしておきましょう。

おすすめ:Amazonで香港ローミングSIMを買う

 SIMロックフリースマホを調達できるなら(後述)、China Unicom HKが提供しているデータ通信用SIMを予め日本で買っておくのがおすすめです。国内キャリアの海外サービスも、中国ではChinaUnicomの回線を利用しています。

 中国国内で契約すると金盾の影響を受けてしまいます。香港で契約してもいいのですが、手続きにはそれなりに時間が掛かるので、日本で買っておくのが一番です。

 何種類かありますが、私が買ったものを紹介します。

「跨境王」 500MB/1週間/1500円くらい

 私が前回買ったSIMです。香港についてから指定の番号をダイヤルすることでデータプランを有効化できます。予め66香港ドル(約1060円)分のチャージがされていますが、実際使うのは「1日パス/38香港ドル/300MB」か「7日パス/78香港ドル/500MB」のプランになると思うので、不足分+αを出国前にChinaUnicomの公式サイトでチャージ(網上増値)しておきましょう。右下のフォームに入力するのはID/PASSではなく、上下とも電話番号です。

 なお「1ヶ月パス/35香港ドル/100MB」のプランは罠です。100MBを使い切ると残りの期間は「2香港ドル/1MB」の従量課金になってしまい、1ヶ月が経過するまでは別のプランに変更することもできません。

「中港7日上網」 1GB/1週間/3000円くらい

 私が今回買ったSIMです。商品名にはmicroSIMとありますが、説明書きの通りnanoSIM+2段階のアダプタになっており、全サイズに対応できます。跨境王と違ってデータ通信専用ですが、レビュー見る限り実績は豊富なので、まぁ大丈夫でしょう。

 

SIMロックフリー端末の調達

docomoAndroidSIMロック解除

 2011年4月〜2015年4月発売の端末なら、ドコモショップで3240円払うとSIMロックを解除してもらえますテザリングできないのが玉に瑕ですが、高機能なSIMフリー端末を安価に入手できるので、オススメです。

ブックオフスマホをもらう

 部屋に転がってる古い携帯を売るとスマホが貰えます。翌月末までに解約すれば合計4298円です。端末性能はしょぼいですが、それなりには使えます。旅行用としてはカメラがしょぼいのが残念ポイント。

1万円前後のちょっといい端末を買う

coviaのFLEAZ F4s+freetelのpriori2など。priori2くらいだとカメラ画質もだいぶマシになってくるようです。

その他

 docomo以外でも、機種によってはSIMロックを解除できることもあります。手法によってはリスクを伴うこともあるので、良く調べましょう。

 iPhone6新品SIMロックフリーモデルは税込93744円です。円安だなぁ。

 華強北(深センの電気街)で「秋葉原が世界最大の電気街だと思ってた時期が僕にもありました...」と呟きながら山寨機を現地調達するのもオツかもしれません。多くはGSMなので通信速度はkbps単位です。まともな端末は深センでもそれなりの値段です。

 

現地回線を使いつつ、VPNで金盾を超える

 ホテルやカフェなど、Wifiが提供される場所も多いのですが、これらは当然金盾の制約を受けます。ですが、国内でVPNサーバを用意しておけば突破できます。

 少々面倒でも複数の手段を用意しましょう。

 やや高級なホテルでは、香港経由の金盾回避回線をウリにしていることもあるようです。

業者の提供しているVPNを使う

 いくつかの業者がまさに金盾回避目的でVPNを提供しています。前回の旅ではホープムーンを使わせて頂きました。初月無料の月額300円ですが、安いぶん速度は遅めかも。

自分でVPNサーバを立てる

 機種によっては家庭用ルータでもVPN機能がついてるらしいです。お手軽。

 自分でLinux上に立てると色々と勉強になりそうです。Raspberry PIでも十分な速度が出るらしい。良い時代ですね。

 家に置きっぱなしのMacがあるならOSX Server化するのも面白いかも。2400円でアップグレードできます。TimeCapsule代わりのバックアップサーバとしても使えるようになるらしい。

 他にはVPSを借りてVPNサーバとして使う手もあるようです。家庭の回線より安定するのかもしれませんね。

 

 

もう一つのオススメ:郷に従ってみる

 金盾を受け入れてみましょう。それは単にGoogleFacebookと使わないで過ごすだけに留まらず、グレート・ファイアウォール内に広がる「もう1つのインターネット」を体験することを意味します。

 海外の何もかもが繋げないわけではなく、例えば Yahoo! JAPAN は使えました。Slackも半年前は使えたけど、今はどうかな。現地の地図はGoogleMapsよりBaidu Mapの方が詳しいようです。

 同行者がいるなら、金盾内外問わず使える「WeChat」には是非登録すべきです。ほぼLINE。LINEより良いところもあって、たとえば(今は亡き)Google Latitudeのように自分の座標を友達に公開し続けらられたりします。なぜかトロやミッフィーのスタンプがあります。

 メジャーなサービス/アプリの完成度はとても高く、「パチもんしか使えなくてかわいそう」的な認識は吹き飛ばされると思います。毎年日本の10倍の労働者が供給される国がエンジニア育成にも力を入れ、既存サービスの良いところを取り入れつつローカライズしたものを提供してるわけで、出来の悪いわけもなく。金盾は検閲にも利用されましょうが、主要な目的はむしろ、国内インターネット産業の保護なのでしょう。

 そういう観点だと、日本は実にアメリカ文化で。例えばヨーロッパは結構アメリカの巨大企業に厳しいんですよね。MicrosoftIE統合を禁じたり、AppleにmicroUSBアダプタを同梱させたり、フランスでAmazonが送料無料禁止になったり。そのへん日本は割と独占を受け入れがちというか。まあ良い面も悪い面もあるとは思うんですが... とか色々考えるきっかけになったので、行ってみて本当に良かった。高須さんありがとう。(この話はまだ続きます)